トラスに限らず、変形する物体が釣り合っているとは、そのいかなる部分を取
り出してもそれに働く力は合力、合モーメントが0となっていることを言う。
なお、釣合いは変形後で考えるのが合理的であるが、微小変形を考えるので変
形前、変形後の区別は余り意識しないで良い。以下では一応合理性を保って、
節点 i の位置ベクトルを と書くことにする。
さて、トラスの節点には外力が働く。これらは荷重であるか、反力であるか、
またはそれらの合力である。もちろん、特別な場合として、自由な節点は荷重
を受けていることになる。一般に、節点 i に働く外力を節点力と
言い、
で表す。
釣り合っているトラスの部材内部にも力が働き、これらを内力という。
連続体や、それらを組み合わせたものの釣合いを考えるとき、それらをいくつかの 部分に分けて、それらの間の力のやり取りを図示してみるとわかりやすい。 そのような図をfree body diagramと呼ぶ。例えばトラスの場合、ある節点 i での 力のやり取りを考えるには図1.1の様なものを考えれば良い。
図において 等は、ピン i が部材 I に及ぼす力(材端力
と呼ばれる内力)を表す。作用反作用の法則により、部材 I がピン i に
及ぼす力は
となり、節点 i ではそこに集まる各部材が及
ぼす力と外力が釣り合っている。従って、
でなければならないが、式(1.2)を参照すれば上式は
と書けることになる。なお、トラス材端とピンの間に力のモーメントが働かないのは 接合に摩擦がないからである。
次に、一本の部材について考える。
図 1.2: equilibrium of a truss member
図1.2(a)を参照すれば、部材 I の釣合いより、部材 I の端点 i、j での材端力は釣り合っていなければならず、
でなければならない。従って、
でなければならない。すなわち、 は部材 I の軸方向を向く。
次に、トラス部材内部の力について考える。図1.2(b)を参照して、
トラス部材中の任意の位置で部材を切断したとき、断面に生じている力の
合力と合モーメントを
、
とすれば、図の切り方では
を得る。これより、 は切断する位置に関係なく一定であり、節点
j を含む切り方をする場合を考慮して次のように言うことが出来る。すなわ
ち、ある釣合い状態では、部材 I に固有の量
があって、部材 I
を任意の位置で切ると、その断面に発生する合力
はその断面から外側
を向く部材軸方向単位ベクトルを
として
と書
ける。従って、特に
であるので、式
(1.4)は次のように書き変えられる。
を部材 I の部材力と呼ぶ。
の符号は引張りが正になってい
ることに注意されたい。一般に、式(1.5)を満たす
の組を、釣合い系と呼ぶ。
が釣合い系を成すとき、外力
は全体として釣
り合っている。実際、
となる。各行最後の等式は、一つの部材 I を固定して i に関する和を考 えてみれば明かである。