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高速多重極法

境界要素法は曲面 S 上で次のような形の積分方程式

 

を未知関数 について解く方法である。 ここに、c は定数、 Kf は既知関数であり、K は核関数と呼ばれる。今 K が適当な 関数 () によって と分解できたとすると(1)右辺の積分のうち、 S の部分 からの寄与は

 

と書ける。ここに x から十分離れているとする。式 (2)に含まれる をモーメントと呼ぶ。多数の点 x に 対して式(1)の右辺を評価するとき(2)を用いると、 x に無関係なので、式(1)の右辺を直接評価する従来法 に比べて計算効率が良いと考えられる。この際、上記モーメントを効率良く計 算する為に S を含む立方体をとり、これを階層的に細分化することによっ て境界要素の木構造を作り、これを利用するアルゴリズムが提案されている。 さらに、式(2)の評価も直接行うのではなく、ある点 ま わりに都合の良い関数で展開してやり、展開係数の形(局所展開と呼ぶ)で評価 しておけば、点 近傍の多くの点 x で式(1)の右辺を効率 良く評価することが出来る。そのような計算法のうち、 等が 解くべき微分方程式を満たす様に取る方法を高速多重極法、必ずしもそのよう に取らず、たとえば K のTaylor展開等を用いる方法(この場合、 は多項式となる)をパネルクラスタリング法と呼んでいるようで ある。

前述のように、これらの解法の計算量は 、 記憶容量は 程度である。従来法の計算量は、係数行列を計算するだけ で 、線形方程式を直接法で解くと であるので、これは著 しい改善である。ただし高速解法の計算量の評価における に掛かる定数はかなり大きいため、これらの解法が実際に有利 になるのは未知数が数百以上の問題においてである。なお、連立方程式の解法 としてはGMRES等の繰り返し解法が広く使われてるようになっており、良い前 処理を用いると非常に速く解の収束を得る事が出来る。特に高速多重極法は近 年盛んに研究が行なわれ、現在までにLaplace方程式(2次元 [4,5,6]等、3次元[7,8,9])、 Helmholtz方程式[10,11,12]、静弾性問題(2次元 [13]、3次元[14])、2次元定常動弾性 [15,16]、クラック問題(2次元伸展亀裂[17]、2次 元Laplace+Galerkin[18]、3次元Laplace[19]、3次元 静弾性[20])などの研究が行なわれている。なお、繰り返し解法を 用いれば、従来の境界要素法でも の記憶容量で問題を解くことは可能 ではある。

高速多重極法による解析例を2、3示す。Fig.13次元静弾性 Crack問題を高速多重極法で解いたときの未知数の数と全計算時間 (DEC alpha 533MHz をCPU とする互換機使用) との関係を示す[20]。

  
図 1: CPU time for an elastostatic crack problem in 3D.

扱った問 題は単一の円形クラックに一様に垂直応力が作用した場合である。基礎的研究 であるので、実用上この問題を解くのにふさわしい数より遥かに多い数の要素 を用いた解析を行っている。図中のfmm-(a,l,s)は、種々の高速多重極法(詳細は文 献[20]を参照されたい)、conv は従来法を表す。これより、未知数 数百元の問題で、既に高速多重極法は従来法より速くなることがわかる。次に、定 常動弾性学の解析例を示す[16]。中心間が 3a だけ離れ た、 の半径 a の空洞群の中央に半径 6a の空洞を有する 弾性体 (Poisson比) に、平面P波が図の左側から入射したときの変形 をFig.2に示す。

  
図 2: Deformation of circular holes.

図は入射波の変位のピークが大きい空洞の中心 にあるときのもので、入射波の波数は 、要素総数は5760であ る。



N. Nishimura
Mon Sep 21 19:50:46 JST 1998