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多重極法のアルゴリズム

  本節では多重極法のアルゴリズムについて述べる。

クラック問題における多重極法は、開口変位 S 上で与 えられた時、式(4)に現れる積分を S 上の多くの点で高速に求める 方法である。その手順は以下の通りである。

  1. (要素分割) 対象領域となるクラック S を、通常の境界要素法の要領 で要素分割する。

  2. (ツリー構造の決定) クラック S に外接する立方体を考える。これを level 0のcellとする。この立方体の各辺を2等分して、立方体を8個の部 分立方体に分割する。このうち境界要素を含む立方体をlevel 1のcellと 呼ぶ。以下同様にlevel i のcellを8分割してlevel i+1 のcellを 作る。また、level i のcell C がlevel i+1 のcell を含む 時、C の 親cell、cell はcell C の子cell と呼ぶ。cellの分割の際には、境界要素を含まないものはそれ以上の分割 をやめ、cellの含む境界要素数が予め決めた数よりも多い場合はその cellをさらに分割する。子cellを持たないcellのことをleafと呼ぶ。

  3. (多重極モーメントの計算) まずleafであるcellにおいて、その中心回 りの多重極モーメントを式(16)、式(17)で計算する。次に level数をひとつづつ減少させながら多重極モーメントをcellの中心に関して求 める。すなわち、leafでないcell C において、子cellの多重極モーメン トを子cellの中心から、cell C の中心へ式(14)、 式(15)によって移し、cell C が含む全ての子cellについて足し 合わせる。この操作をlevel 2 のcellに到達するまで行ない、全てのlevel の全てのcellの多重極モーメントを計算する。

  4. (展開係数の計算) まず、level 2 のcellからlevel数をひとつづつ増 加させながらcellの中心での展開係数を計算していく。level i のcell C での展開係数は、C にやや近いcellからの寄与と、それより遠いcell からの影響に分けて計算する。前者は、C の親cellと隣接しているlevel i-1 のcellに含まれるlevel i のcell全体から、C に隣接している level iのcellを除いたものに対して式(21)、式(22) から計算したものである。また、後者は C の親cellの展開係数を、その 展開中心を親cellのものからcell C の中心に式(23)、および 式(24)を使って移動したものをたしあわせて求める。

  5. (積分の評価) 式(4)の積分の評価は、最終的には求めた展 開係数から式(20)によって計算される値とcell C に隣接するcell からの影響を従来法で直接積分したものの和として評価される。

以上のように、多重極法は、開口変位が与えられた時、式(4)右辺の積 分を S 上の多くの点で計算する。しかし、積分方程式法においては開口変 位は未知である。一方、繰返し型の線形方程式の解法の多くでは、各繰返しス テップにおいて必要な操作は係数行列に解の候補ベクトルを掛けたものを計算 することである。従って、そのような線形方程式の解法に多重極法を組み合わ せることによって比較的小さな計算機でも超大型の境界値問題を解くことが可 能になる。



N. Nishimura
Thu Sep 10 18:18:20 JST 1998