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3次元静弾性問題に対する多重極積分方程式法の定式化

本節では、3次元静弾性境界値問題に対する多重極積分方程式法の定式化を示す。

さて、領域(その境界をSと表す)における静弾性問題の支配方程式は次式である。

ただし、はNavierの演算子で、弾性定数テンソル によってと定義される。は Lamé定数、はKroneckerのデルタである。

この問題の解の変位に関する積分表示は次のようになる。

 

ただし、はトラクションであって、変位によって と書ける。また、 およびは弾性学の第一基本解およびその第二基本解であり、 次のように書くことができる。

  

また、に関する偏微分を表す。

西村ら[5]の3次元静弾性クラック問題に対する多重極積分方程式法の 定式化にならい、式(10)の基本解を次式のように展開する。

 

ただし、は複素共役を表し、

と定義される関数である。また、は、原点 O から見た点 x の極座標を とすると、

 

と定義される関数である。ここで、 はLegendre 陪関数である。

今、S の部分 に対して式(9)に含まれる積分を、 式(12)を用いて評価すると、

  

を得る。ただし、x から十分遠く、 が成り立つものとする。ここに、 O を原点とする多重極モーメントで、

と計算される。式(17)および式(18)が 3次元静弾性問題の積分方程式における多重極展開公式である。これは、 西村らが3次元静弾性クラック問題において得た多重極展開公式と同様であり、 以下に述べる多重極モーメントの原点の変換式、多重極モーメントから局所展開係数への変換式、 およびその展開中心の変換式も同様に誘導できる。以下に、その結果のみを示す。

まず、多重極モーメントの評価における原点を O から へ移動する場合、 対応する多重極モーメントの変換式は、

と計算される。ただし、を表す (以下、は同様な範囲を表すものとする)。

さらに、多重極展開公式(17)および (18)を評価するに当たって、ある点 の 近傍の x に対しては

が成り立つ。ただし、は、を展開中心 とした局所展開係数であり、

と計算される。

最後に、 が成り立つものとすると、 展開中心 に移動すると、対応する局所係数の変換式は、

と計算される。

以上で、3次元静弾性問題における多重極積分方程式法を定式化するための 道具が全て揃ったことになる。なお、多重極積分方程式法の運用の過程に関しても 西村らに準じて行なう。

本論文で用いた境界要素は、変位、トラクションともに区分一定要素である。 また、線形方程式の解法には、 非restart版のGMRES[6]を用いた。行列の前処理としては 速水[7]らの提案したブロック対角スケーリングを用いた。

以上に基づいて作成した解析プログラムの妥当性を検証するために、 直方体状の弾性体の一様引張り問題を解析例として示す。この解析においては、 無限和を10項で打ち切り、一つのcellに含まれる境界要素の最大数を50 とした。この結果得られた、問題の自由度に対する一回の反復に要する計算時間(CPU time)は Fig.1 となった。これより、計算量がほぼ 自由度に比例していることがわかる。なお、得られた解は厳密解とよく 一致していることを確認した。

なお、式(4)と式(9)を比較すれば明らかなように、 式(4)に対する多重極積分方程式法の適用も本節と同様に行うことができる。

 
図 1: CPU time per iteration.



N. Nishimura
Wed Dec 16 21:06:14 JST 1998