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解 析 手 順

以上の算法に基づいて積分方程式(2)を解く手順は スカラー波動問題の場合と同様である.ここでは, 時空間の階層構造を利用したmultilevel PWTDアルゴリズム を適用した場合の手順を示す.

step 1四分木構造を用いた空間の階層化 領域 D を囲む正方形を level 0 の cell と呼ぶ. ある level l ($l\ge 0$) の cell C について,C が 所定の数より少ない境界要素しか含まない場合,C を leaf と呼ぶ. そうでない場合は C を4等分し,それらのうち境界要素を含む 正方形だけを level l+1 の cell とする. これを C の子 cellと呼び,これらについても分割を繰り返して 更に下層の cell を作る.ここで,最下層の level を lmax と記し, level l の cell の一辺の長さを L(l) と記す.

step 2時間軸の階層化 level 毎に式(15)及び式(25)を満足する ような RRcT1zT2z 及び M を定める. これらの諸量がある level l に関するものである事を示すために 各記号の右肩に (l) を付ける.

R(l) は level l の cell に外接する円の半径 $L^{(l)}/\sqrt{2}$に, Rc(l) $(\beta+1)L^{(l)}$ に定める.ここで $\beta$ は1以上の 整数に選ぶ. そして,level l に関して z(l) 番目の時間区間 の端点 T1z(l) T2z(l) を式(24) と同様に定める.このとき, M(lmax) を式(25)にならって, $M^{(l_{max})}=(\beta+1-\sqrt{2})L^{(l_{max})}/(c_1\Delta t)-2p_t+1$ と 決める(pt はlevelに依存しない定数とする).また, $M^{(l)}=2M^{(l+1)}\quad (l=2,3,\ldots,l_{max}-1)$ と決める. このとき,level l のある cell C (中心 (C1,C2)) は,

 
$\displaystyle \vert C_i-C'_i\vert \ge (\beta+1)L^{(l)}\quad i=1,2 $     (9)

を満足するような level l の cell C' (中心 (C'1,C'2)) に対して 式(15)と同様な関係を満足する.したがって, それら C' に含まれる境界要素の合併集合 S0C との間で 2.3 の算法が適用できる.

step 3積分の評価 式(2)を現時刻 t の密度 $\mbox{\boldmath$u$ }$ あるいは $\mbox{\boldmath$t$ }$ の未知成分 について解く事が目的である.この解法に反復解法を用いるならば, それら未知成分にある値を与えたときに, 全ての選点 $\mbox{\boldmath$x$ }$ と現時刻 t に対して式(2)の $S\times[0,t]$ 上 の積分(層ポテンシャル)が評価できればよい.その評価法を以下に示す.

現時刻を $t_\alpha=\alpha\Delta t$ $(\alpha=1,2,\ldots,N_t)$ とすると, 過去の時刻 $t_{\alpha'}$ $(\alpha'=0,1,\ldots,\alpha-1)$ における 密度 $\mbox{\boldmath$u$ }(t_{\alpha'})$ 及び $\mbox{\boldmath$t$ }(t_{\alpha'})$ は既知である. さて,現時刻の密度 $\mbox{\boldmath$u$ }(t_\alpha)$ 及び $\mbox{\boldmath$t$ }(t_\alpha)$ が与えられた時, 式(2)の $S\times[0,t_\alpha]$ 上の積分は, $\{S\backslash S_0\}\times[0,t_\alpha]$ 上と $S_0\times[0,t_\alpha]$ 上と に分けて評価される.

step 3.1 $\{S\backslash S_0\}\times[0,t_\alpha]$ 上の積分の評価 level 2 以上の cell について,その cell に含まれる選点 $\mbox{\boldmath$x$ }$ と 現時刻 $t_\alpha$ に対して, $\{S\backslash S_0\}\times[0,t_\alpha]$ 上に分布した 密度 $\mbox{\boldmath$u$ }(t_{\alpha'})$ 及び $\mbox{\boldmath$t$ }(t_{\alpha'})$ $(\alpha'=0,1,\ldots,\alpha)$ に よる層ポテンシャルは,従来法によって積分を直接実行して求める. ここで,level l の cell C について 境界 $S\backslash S_0$ を含む cell とは, C の親 cell C' に対して式(28)を満足しない上に leaf である ような level l-1 の cell と,更に, C が leaf である場合には C 自身と式(28)を満足しない ような level l の cell とである.

step 3.2 $S_0\times[0,t_\alpha]$ 上の積分の評価 現時刻 $t_\alpha$ が level l について 第 $\lfloor\alpha/M^{(l)}\rfloor$ (これを $z_\alpha^{(l)}$ と書く) 時間区間 に属する時刻である事に注意すると, 過去の時間区間 $z^{(l)}=0,1,\ldots,z_\alpha^{(l)}-1$ に 対するoutgoing ray ${\cal O}_{pq}^{z^{(l)}}$ 及び incoming ray ${\cal I}_q^{z^{(l)}}$ は既知である. ${\cal I}_q^{z^{(l)}}$ $S_0\times(T_1^{z^{(l)}},T_2^{z^{(l)}}]$ 上に 分布した密度 $\mbox{\boldmath$u$ }^{z^{(l)}}$ $\mbox{\boldmath$t$ }^{z^{(l)}}$ によるポテンシャルを 式(18)のように与えるものであり, このポテンシャルは後述する step 5.2 に従って既に計算済みである. なお, $S_0\times(T_2^{z_\alpha^{(l)}-1},t_\alpha]$ 上に 分布した密度によるポテンシャルは,時刻 $T_2^{z_\alpha^{(l)}}$ 以降に ならないと $(\mbox{\boldmath$x$ },t_\alpha)$ に到達しないので考慮する必要はない. ゆえに, $S_0\times[0,t_\alpha]$ 上の積分が評価された.

step 4現時刻の未知成分の求解 以上より, 全ての選点 $\mbox{\boldmath$x$ }$ 及び 現時刻 $t_\alpha$ に対して式(2)の 積分が評価される.したがって,現時刻 $t_\alpha$ の密度の未知成分に関して 反復解法を用いれば,これらの未知量を求める事ができる.求解後, $\alpha < N_t$ であれば step 5 に進み,そうでなければ 解析を終了する.

step 5outgoing ray 及び incoming ray の計算 現時間区間 $z_\alpha^{(l)}$ に対する outgoing ray 及び incoming ray を 計算する.

step 5.1outgoing rayの計算 最下層の level の cell から level 2 まで順に上に向かって, 現時間区間 $z_\alpha^{(l)}$ の各 cell の 中心に関する outgoing ray ${\cal O}_{pq}^{z_\alpha^{(l)}}$ を 計算する.ただし,現時刻ステップ数 $\alpha$M(l) の 整数倍である level l についてのみ実行する. このとき,leaf である cell に対しては式(17) に従う.そうでない cell C (中心 $\mbox{\boldmath$s$ }$) に対しては 子 cell (中心 $\mbox{\boldmath$s$ }'$) の ${\cal O}_{pq}^{z_\alpha^{(l+1)}-1}$ ${\cal O}_{pq}^{z_\alpha^{(l+1)}}$ を用いて計算を行う. この際,式(26)に従って角 $\phi $ の補間を同時に行う.すなわち,

 
$\displaystyle {{\cal O}_{pq}^{z_\alpha^{(l)}}(\mbox{\boldmath$s$ },t,\mbox{\bol...
...\phi^{(l+1)}}^{N_\phi^{(l+1)}}
D_{N_\phi^{(l+1)}}(\phi_n^{(l)}-\phi_m^{(l+1)})}$
    $\displaystyle \left({\cal O}_{pq}^{z_\alpha^{(l+1)}-1}(\mbox{\boldmath$s$ }',t,...
..._\alpha^{(l+1)}}(\mbox{\boldmath$s$ }',t,\mbox{\boldmath$k$ }_m^{(l+1)})\right)$ (10)

に従って計算する.ここに, $N_\phi^{(l)}$ $\phi_n^{(l)}$ は level lR(l) に 対して式(26)の第2,4式より計算されるものである.このとき 次式が成立する事に注意する.
 
$\displaystyle N_\phi^{(l)}=2N_\phi^{(l+1)}$     (11)

step 5.2incoming rayの計算 level 2 の cell から順に下に向かって, 現時間区間 $z_\alpha^{(l)}$ の各 cell の中心に関する incoming ray ${\cal I}_q^{z_\alpha^{(l)}}$ を計算する. ただし step 5.1 と同様に,現時刻ステップ数 $\alpha$M(l) の 整数倍であるような level l についてのみ実行する. さて,ある level l の cell C ${\cal I}_q^{z_\alpha^{(l)}}$ に 寄与する境界 S0 とは,level l の全ての cell のうち, 式(28)を満足する cell C' に含まれる境界要素の合併集合であった. このような C' は,C の親 cell に対して 式(28)を満足しない level l-1 の cell の子 cell のうち C に対して式(28)満足するような level l の cell であるか, C の親 cell に対して式(28)を満足する ような level l-1 の cell の子 cell かである. 前者の C' から C ${\cal I}_q^{z_\alpha^{(l)}}$ への寄与は 式(19)に従って計算されるものである. この際,2.4.4で述べた打ち切り 項数 $N_\delta$ $N_\phi^{(l_{max})}$ に取った. 他方,後者の C' からの寄与は,C (中心 $\mbox{\boldmath$o$ }$) の 親 cell (中心 $\mbox{\boldmath$o$ }'$) の ${\cal I}_q^{z_\alpha^{(l-1)}}$ を用いて,

 
$\displaystyle I_q^{z_\alpha^{(l)}}(\mbox{\boldmath$o$ },t,\mbox{\boldmath$k$ }_...
...^{z_\alpha^{(l-1)}}\!\!(\mbox{\boldmath$o$ }',t,\mbox{\boldmath$k$ }_n^{(l-1)})$     (12)

と計算されるものに他ならない.この際,式(26)に よって $\phi $ に関する間引き(anterpolation)を行う事に注意する. 更に C が leaf である場合には,上のように計算 された C ${\cal I}_q^{z_\alpha^{(l)}}$ を用いて式(18)に従い, $(\mbox{\boldmath$x$ },t_{\alpha'})$ ( $\mbox{\boldmath$x$ }\in C$ $\alpha'=\alpha,\alpha+1,\ldots,N_t)$ に 対して $S_0\times(T_1^{z_\alpha^{(l)}},T_2^{z_\alpha^{(l)}}]$ 上に 分布した密度 $\mbox{\boldmath$u$ }^{z_\alpha^{(l)}}$ 及び $\mbox{\boldmath$t$ }^{z_\alpha^{(l)}}$ による 層ポテンシャルを計算する. ここで, $I_q^{z_\alpha^{(l)}}$ が確定した時点で 現時刻 $t_\alpha$ のみならず未来の 時刻 $t_{\alpha'}$ $(\alpha'=\alpha+1,\ldots,N_t)$ に対しても ポテンシャルを計算しておく事に注意する. ここで計算した値は,既に過去の時間区間について各選点,各時刻に対して 記憶していたものに加算して再び記憶する. step 3.2 で呼び出す値とはこれを指す.

step 6更新 現時刻ステップ数 $\alpha$ を1だけ更新してstep 3 に戻る.


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Toru Takahashi
2001-07-18