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多重極法のアルゴリズム

本節では多重極法のアルゴリズムについて述べる.

クラック問題における多重極法は,開口変位 $\phi$S 上で与 えられた時,式(3)に現れる積分を S 上の多くの点で高速に求める 方法である.その手順は以下の通りである.

Step1
(要素分割) 対象領域となるクラック S を,通常の境界要素法の要領 で要素分割する.

Step2
(ツリー構造の決定) クラック S に外接する正方形を考える. これをlevel 0のセルとする.この正方形の各辺を2等分して,正 方形を4個の正方形に分割する.このうち境界要素を含む正方 形をlevel 1のセルと呼ぶ.以下同様にlevel i のセルを4分割 してlevel i+1 のセルを作る.また,level i のセル C が level i+1 のセル C' を含む時,CC' の 親セル, セル C' はセル C の子セルと呼ぶ.セルの分割の際には,境 界要素を含まないものはそれ以上の分割をやめ,セルの含む境界 要素数が予め決めた数よりも多い場合はそのセルをさらに分割す る.子セルを持たないセルのことをleafと呼ぶ.


  
Figure 2: セル分割と対応するツリー構造
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\epsfile{file=FIG/tree_construct.eps,scale=0.35} \epsfile{file=FIG/tree.eps,scale=0.35} \end{center} \end{figure}

Step3
(多重極モーメントの計算) まずleafであるセルにおいて,その 中心回りの多重極モーメントを式(6)で計算する.次に level数をひとつづつ減少させながら多重極モーメントをセルの中 心に関して求める.すなわち,leafでないセル C において,子 セルの多重極モーメントを子セルの中心から,セル C の中心へ 式(7)によって移し,セル C が含む全ての子セルについて足 し合わせる(図-3).この操作をlevel 2 のセルに到 達するまで行ない,全てのlevelの全てのセルの多重極モーメント を計算する.


  
Figure 3: 多重極モーメント及び局所展開係数の移動
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\epsfile{file=FIG/M2ML2L.eps,scale=0.4} \end{center} \end{figure}

Step4
(展開係数の計算) まず,level 2 のセルからlevel数をひとつづ つ増加させながらセルの中心での展開係数を計算していく.level i のセルC での展開係数は,C にやや近いセルからの寄与 と,それより遠いセルからの影響に分けて計算する.前者は,C の親セルと隣接しているlevel i-1 のセルに含まれるlevel i のセル全体から,C に隣接しているlevel iのセルを除いたも の(Interaction Listと呼ぶ(図-4))に対して 式(9)から計算したものである.また,後者は C の親セルの 展開係数を,その展開中心を親セルのものからセル C の中心に 式(10)を使って移動したものを足しあわせて求める (図-3).
  
Figure 4: セル x の Interaction List(斜線部)
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\epsfile{file=FIG/fig8.eps,scale=0.6} \end{center} \end{figure}

Step5
(積分の評価) 式(3)の積分の評価は,最終的には求めた展 開係数から式(8)によって計算される値とセル C に隣接するセルからの影響を従来法で直接積分したものの和とし て評価される.

以上のように,多重極法は,開口変位が与えられた時,式(3)右辺の積 分を S 上の多くの点で計算する.しかし,積分方程式法においては開口変位 は未知である.一方,繰返し型の線形方程式の解法の多くでは,各繰返しステッ プにおいて必要な操作は係数行列に解の候補ベクトルを掛けたものを計算するこ とである.従って,そのような線形方程式の解法に多重極法を組み合わせること によって比較的小さな計算機でも超大型の境界値問題を解くことが可能になる.



Ken-ichi Yoshida
2001-06-15