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多重極法のアルゴリズム

本節では多重極法のアルゴリズムについて述べる.

1.
(要素分割) クラック S を,通常の境界要素法の要領で要素分割する.
2.
(ツリー構造の決定) クラック S に外接する立方体を考える.これを level 0のcellとする.今,level $i(\ge0)$ のcell C を考える.こ の立方体の各辺を2等分して,立方体を8個の部分立方体に分割する.この うち境界要素を含む立方体をlevel i+1 のcell と呼ぶ.以下同様に cellを分割して,8分木構造を導入する.また,level i のcell C が level i+1 のcell C' を含む時,CC' の 親cell, C'は C の子cell と呼ぶ.cellの分割の際には,cellの含む境界要素数が予 め決めた数よりも多い場合に限ってそのcellをさらに分割する.子cell を持たない,つまり分割をする必要のなくなったcellのことを leafと呼 ぶ.
3.
(多重極モーメントの計算) 最下層の level の cell(leaf)から level 2 の cell まで,level数をひとつづつ減少させながら多重極モー メントを cellの中心に関して求める.この際,cell C が leaf であ る場合は,式(13),式(14)を用いて計算する.また,cell C が leaf でない場合は,C が含む全ての子cellについて,子cell の多重極モーメントを子cellの中心から,Cの中心へ式(15), 式(16)によって移し,足し合わせる.この操作を繰り返しなが ら,全てのlevelの全てのcellの多重極モーメントを計算する.
4.
(局所展開係数の計算) level 2 のcellから最下層の cell(leaf) まで,level数をひとつづつ増加させながらcellの中心での局所展開係数 を計算していく.今,level i のcell C を考える. この cell Cでの局所展開係数は,C の少し遠いcellからの寄与と, 遠方のcellからの影響に分けて計算し,それらを足し合わせて求める.
(a)少し遠いcellからの影響
少し遠いcellとは,C の親cellと隣接し ているlevel i-1 のcellに含まれるlevel i のcell全体(最大216個) から,C に隣接している level iのcell(最大27個)を除いたcell の集合(最大189個)のことであり,これらのcellからの寄与は,各々の cellの多重極モーメントから式(18),式(19)を用いて 計算したものを足し合わせたものである.
(b)遠方のcellからの影響
遠方からの寄与は C の親cellの局所展開係数を,その展開中心を親 cellのものからcell C の中心に式(20),および式 (21)を使って移動 したものをたしあわせて求める.
この様にして,最終的には全てのleafにおける展開係数を計算する.
5.
(積分の評価) 式(3)の積分の評価は,leafにおいて, 局所展開係数から式(17)によって計算される遠方か らの影響とcell C に隣接するcell(最大27個)からの影響を従来法で 式(4)を用いて直接積分したものとの和として評価する.

実際,多重極モーメントを計算するためには開口変位が既知でなければならない. そこで多重極法では上記のアルゴリズムと線形方程式の反復解法を組み合わせて, 高速計算を実現している.



Ken-ichi Yoshida
2000-08-31